そういえば、バートランド・ラッセルは本を書こうと決めたら旅にでたそうだ。二、三カ月して帰ってきた時には、本は頭の中でできあがっている。後はそれを書き下ろせばいいだけだったそうだ。思考を無意識の領域にまかせられるなんて凄い。

私にはラッセルの真似など到底できないが、それでも昔は短い原稿ならテーマを決めてぐっすり眠ると、朝にはできていたものだった。近年はそれができなくなって夢現つ状態で考えている。だからカードをベッドのそばに常時置いておく。忘れないうちに書き留めるのだ。

いったん書き留めてしまうと熟睡できる場合もあれば、堂々巡りしていた頭が自由になってさらに先に進む場合もある。今度のiPhoneにはボイスメモがついているので、書くかわりに吹き込むことにするととても楽なことに気がついた。

しかし、大きな違いがある。紙に書くと書いたものがそのまま目の前に形をとり、相互作用が起こりやすい。吹き込むと、思考が虚空に吸い込まれた状態になり、頭が空っぽになってしまう。フィードバックが起こらないのだ。